中央建設業審議会と社会資本整備審議会の基本問題小委員会が、第29回(2023年9月8日)の会合で、持続可能な建設業に向けた制度的対応の提言をまとめました。
建設業法、ガイドライン、標準約款など、改正点が整理されています。
■1.請負契約の透明化による適切なリスク分担
1-1.情報の非対称性の解消
(1)見積り時や契約締結前に、建設工事に影響を及ぼす事象に関する情報を受注者から注文者に提供することを義務化する。
(2)請負代金の内数として、資材価格等の変動に備えた予備的経費が含まれていれば想定している変動幅、あるいは、予備的経費が含まれていない場合にはその旨と積算の前提としている資材価格など、予備的経費に関する事項を契約書に明記することをガイドライン等に記載する。
(3)オープンブック・コストプラスフィー方式が、導入に適した工事で円滑に活用されるよう、同方式の標準約款を制定する。
1-2.価格変動等への対応の明確化
(4)受発注者ガイドラインにおいて、「民間約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書による契約を締結することが基本である旨を明記する。
(5)建設工事請負契約の書面記載事項を定めた建設業法第19条第1項のうち、第8号が「請負代金の額又は工事内容をどのように変更するかということについての定め」を記載する趣旨であることを明確化するため、「価格等の変更若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更に関する定め」を法定記載事項として明記する。
(6)請負代金額の変更を求め得る場合を規定した民間約款第31条の趣旨や、同条に規定する「経済事情の激変」や「物価・賃金の変動」といった文言に関し、どのような場合がこれらに該当するのか、解釈を明示する。
1-3.当事者間のコミュニケーションと請負契約の適正化
(7)請負代金や工期に影響を及ぼす事象で当事者の責めに帰さないものが生じた場合に、受発注者が誠実に協議するべきことを法定化する。
(8)法19条の3(発注者による不当に低い請負代金の禁止)違反に関わる国土交通大臣等による勧告対象に民間事業者を含める。
(9)法体19条の3違反に関わる「警告」や「注意」などの行政指導を円滑に行うため、不当に低い請負代金の禁止規定の違反につながるおそれのある行為類型を、あらかじめ整理・公表する。
(10)建設工事の請負契約に関する情報を広く調査・整理し、公表できるよう、法令上の根拠規定を措置するとともに、不適切な契約の是正のための組織体制を整備する。
■2.適切な労務費や賃金行き渡りの確保・担保
2-1.標準労務費の勧告
(1)請負契約締結の際における労務費の相場観を示すと共に、廉売行為を規制する際の基準とするため、適切な工事実施のために計上されるべき標準的な労務費を「標準労務費」として、中央建設業審議会が勧告を行う。
2-2.不当に低い請負代金の禁止・労務費等行き渡り
(2) 労務費を原資とする廉売行為を制限するため、受注者が不当に低い請負代金で請負契約を締結することを禁止し、違反事業者に対する勧告等により実効性を担保していく(勧告等を行う判断の基準には(1)の標準労務費を用いていく)。
(3)「標準労務費」を参照した適切な水準の賃金の支払いを確保するため、建設業者に対し、労働者の適切な処遇確保に努めるよう求めるとともに、標準約款に、適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項を追加する。
(4)建設工事の請負契約に関する情報を広く調査・整理し、公表できるよう、法令上の根拠規定を措置するとともに、不適切な契約の是正のための組織体制を整備する。
■3.魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上
3-1.適正な工期の確保関係
(1)著しく短い工期による請負契約締結の制限を徹底するため、発注者だけでなく受注者についても著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、違反者への勧告等により実効性を担保していく。
(2) 建設工事の請負契約に関する情報を広く調査・整理し、公表できるよう、法令上の根拠規定を措置するとともに、不適切な契約の是正のための組織体制を整備する。
3-2.生産性の向上
(3)ICTの活用等により現場管理を行う際の指針を国が作成し、特定建設業者に同指針に則した現場管理を求めていく。
(4)「適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」のとりまとめで示された方針に基づき、一定の条件を満たす遠隔施工管理等を行う場合には、監理技術者等が2つの専任現場を兼任すること、及び営業所専任技術者が1つの専任現場の監理技術者等を兼任することを可能とする制度改正を行う。
詳細:
日刊建設通信新聞 2023年9月11日
国土交通省 中央建設業審議会 基本問題小委員会)(第29回基本問題小委員会)