大学入学共通テストの政治・経済を眺めてみた。

共通テストの出題は、大問が4、5問出題されて、それぞれの問題が政治経済のいろいろな分野に渡って出題される。今年は、「もういちど読む 山川政治経済(山川出版社)」の目次と、解答番号を対比してみた。


(図をクリックして拡大)

タテ方向に読むと、第1問、第3問は政治、経済両分野にわたって幅広い出題だ。それに対して、第2問は経済に集中している。第4問は、かなり狭い分野に全集中だ。

ヨコ方向に読むと、地方自治、労働問題に出題が集中している。

第1問は、地方都市のまちづくりの取り組みだ。地元の観光業、農業に注目して、空き家問題を解決する取組みを企画する際、まったくゼロから着手するわけではなく、そのような取り組みを支援する仕組み、制度があらかじめ用意されていることが少なくない。同様の問題を抱える地域の問題解決のプロセスである公共政策が、何を問題として捉え、その解決をめぐり、どのように対立する意見を突き合わせ、それを解消する仕組みを活用するのか、という観点で読んだ。

第2問は、経済活動にかかわる主体が織りなすネットワークだ。問題文のイラストに、建設業許可の条件が記載されていて驚いたが、1問も問われていなかった。そりゃそうだよな。大学入試問題だもの。問2は、外部不経済というハタ迷惑な関係性の例だ。定石では外部不経済の内部化というアイディアを珍重するけれど、なんでもかんでも価格メカニズムに無理やり押し込めて考えるのではなく、無理なものは無理なんじゃないか、という発想を基本に据えて考えてみる、という姿勢も大切だ。あまりに経済中心過ぎることが問題だ、と言われている今だからこそ、あらためて考えるべき問いだ。

第3問は、日常の経済とグローバリゼーション。今や全世界は一蓮托生であり、先進国だけ、不況から、COVID-19感染症から一足さきに脱出することはできない。経済による相互連関を強めに強めた結果、ひとたび問題が起きると、もう地球上にはどこにも逃げ場がない状況になった。それを不幸と捉えるか、それとも“みんなが嬉しいのが一番なんだで”と捉えるか。

第4問は、特定の領域に出題が集中している問題だ。この2年あまり、COVID-19感染症を契機にあらためてクローズアップされた社会問題と直接対峙してきた点で、中央政治より、むしろ地方自治の重要性が再認識されたと思う。しかしながら、高齢化や少子化の問題で、地域の経済や政治の担い手の確保が困難になっている。地方自治の未来に関する問題提起だ。