建設業法の改正で、施工技術の確保の章の条文を確認します。

施工技術の確保の章では23個の条文が改正の対象です。このうち、条文の内容が変更されたり、条、項が新設されたりしたものは5個です。残りの18個は、第26条の5が新設、追加されたことによる条文番号のズレの補正(形式的な改正)です。

実質的に改正された5条文のうち、建設業者に直接関係する4条文の内容を確認します。

(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)
第25条の27 建設業者は、建設工事の担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保に努めなければならない。

2 (新設)建設業者は、その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない。

3 (略)

4 (変更)国土交通大臣は、前三項の規定による取組に資するため、必要に応じ、講習及び調査の実施、資料の提供その他の措置を講ずるものとする。

第25条の27では、新設された第2項が重要です。今回の建設業法改正の重要な論点のひとつ、“労働者の処遇改善”を規定した条文です。

(建設工事の適正な施工の確保のために必要な措置)
第25条の28 特定建設業者は、工事の施工の管理に関する情報システムの整備その他の建設工事の適正な施工を確保するために必要な情報通信技術の活用に関し必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、当該特定建設業者が講ずる前項に規定する措置の実施のために必要な措置を講ずることができることとなるよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。

3 国土交通大臣は、前二項に規定する措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項を定め、これを公表するものとする。

第25条の28は、新設された条文です。特定建設業者に関する規定です。
建設工事の適正な施工を確保するために必要な措置として、第1項は情報通信技術の活用を挙げています。
情報通信システムは、元請である特定建設業者だけで利用するものではなく、同じ工事現場で働く、下請負人が協力して適切に利用することで、有効に機能します。
従って、下請負人に対する指導も特定建設業者の努力義務と第2項は規定しています。
第3項は、国土交通省がガイドラインを提示することを義務付けています。

(主任技術者及び監理技術者の設置等)
第26条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

2 (略)

3 (変更)公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。ただし、次に掲げる主任技術者又は監理技術者については、この限りでない。

一 (変更)当該建設工事が次のイからハまでに掲げる要件のいずれにも該当する場合における主任技術者又は監理技術者

イ (新設)当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。

ロ (新設)当該建設工事の工事現場間の移動時間又は連絡方法その他の当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。

ハ (新設)主任技術者又は監理技術者が当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該工事現場に係る第二十六条の四第一項に規定する職務を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。

二 (新設)当該建設工事の工事現場に、当該監理技術者の行うべき第26条の4第1項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第15条第2号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合における監理技術者

4 (変更)前項ただし書の規定は、同項各号の建設工事の工事現場の数が、同一の主任技術者又は監理技術者が各工事現場に係る第26条の4第1項に規定する職務を行つたとしてもその適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない。

5 (変更)第3項の規定により専任の者でなければならない監理技術者(同項各号に規定する監理技術者を含む。次項において同じ。)は、第27条の18第1項の規定による監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、第26六条の6から第26条の8までの規定により国土交通大臣の登録を受けた講習を受講したもののうちから、これを選任しなければならない。

6 (略)

第26条は、公共性のある施設等に配置する主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに専任とする規定です。

第3項ただし書きの部分が変更されています。現行法は、工事現場ごとの専任性の例外として監理技術者のみを規定していました。改正法では、工事現場ごとの専任性の例外を主任技術者、監理技術者とも一定の条件付きで容認しています。

主任技術者、監理技術者とも、工事現場に専任でないことが認められるのは、次のすべてに該当する場合です。
・請負代金の額が一定の金額未満(政令で規定)
・兼任する工事現場が近接している、連絡方法等工事現場の施工体制確保に必要な事項が一定の要件に適合(国土交通省令で規定)
・工事現場に関する職務をサポートする情報システムが一定の条件に適合(国土交通省令で規定)

監理技術者のみ、工事現場に専任でないことが認められる条件は、第26条の4(主任技術者及び監理技術者の職務等)第1項に規定する職務を補佐する者を専任で配置する場合です。

第3項ただし書きが成立する条件は、以上のように簡単ではありません。

続く第4項は、兼務する工事現場の数という条件から、第3項の適用の機会を限定しています。

第5項は、第3項が規定する専任の監理技術者は、適正な監理技術者資格者証の交付を受けていて、所定の講習を受講していることが要件です。

(営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)
第26条の5 (新設)建設業者は、第26条第3項本文に規定する建設工事が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、第7条(第二号に係る部分に限る。)又は第15条(第二号に係る部分に限る。)及び同項本文の規定にかかわらず、その営業所の営業所技術者又は特定営業所技術者について、営業所技術者にあつては第26条第1項の規定により当該工事現場に置かなければならない主任技術者の職務を、特定営業所技術者にあつては当該主任技術者又は同条第2項の規定により当該工事現場に置かなければならない監理技術者の職務を兼ねて行わせることができる。

一 当該営業所において締結した請負契約に係る建設工事であること。

二 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。

三 当該営業所と当該建設工事の工事現場との間の移動時間又は連絡方法その他の当該営業所の業務体制及び当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。

四 営業所技術者又は特定営業所技術者が当該営業所及び当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該営業所における建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理に係る職務並びに当該工事現場に係る前条第一項に規定する職務(次項において「営業所職務等」という。)を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。

2 前項の規定は、同項の工事現場の数が、営業所技術者又は特定営業所技術者が当該工事現場に係る主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねて行つたとしても営業所職務等の適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない。

3 第1項の規定により監理技術者の職務を兼ねて行う特定営業所技術者は、第27条の18第1項の規定による監理技術者資格者証の交付を受けている者であつて、第26条第5項の講習を受講したものでなければならない。

4 前項の特定営業所技術者は、発注者から請求があつたときは、監理技術者資格者証を提示しなければならない。

第26条の5は、全体が新設です。第26条第3項ただし書きと似ています。いきなり条文を読む前に、大雑把なイメージを確認しましょう。国土交通省が開催している説明会資料のスライドが有効です。

(特定)営業所技術者が工事現場の主任技術者、監理技術者を兼任できる場合を規定しています。(特定)営業所技術者は、営業所ごとに専任で配置されて、建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をしています(第7条第2項)。現行法では、工事現場の主任技術者、監理技術者を兼務することはできません。この制約を、改正法では、一定の条件のもとで緩和しています。

第26条の6から第27条の22までに含まれる改正は、直接、建設業者を規定する条文の改正ではないので、説明は割愛します。

参考
「第三次・担い手3法に関する説明会」の開催について~本年6月に成立した第三次・担い手3法の説明会を全国各地で順次開催します~