ジェンダー、“文化的・社会的性”に関する男女間の格差に関する、ありがちな、誤った認識、理解を正してくれる本です。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ・レポート」2023年版の男女平等度ランキングで、日本は146か国中125位と、ジェンダー後進国でした。とくに政治、経済の分野での格差が大きい。だろうな、と思います。経済学の分析は、ジェンダー格差が大きい企業ほど利潤が少ない傾向を明らかにしています。問題は、どうしてジェンダー格差が大きいのか、大きくなっちゃってるのか、という原因が、それほど明らかではない、ということです。

たとえば「うちの会社はキツイ仕事だから男が多くて当然」とか思いますよね。それがそもそも“思い込み”なのでは?ということなのです。それから、たとえば会社のホームページの社員紹介のコーナーで「女性ならではの感覚を活かして頑張ってください」みたいなコメント、ありますね。「女性ならではの感覚って、具体的に何を求めているのですか?そういう感覚が必要な仕事が職場に本当にありますか?」ということなのです。アゲ足取りのようですが、私も会社員時代から疑問に思っていたことが、この本を読んで、それってやっぱりそーなんだ、と納得の連続でした。

男性は女性を誤解しているし、女性も男性を誤解している。ジェンダー・バイアスですね。そもそも、男性、女性って、人間を2つにしか分類していません。それで教育、社員の採用、職場配置、昇進、キャリアプラン、人生設計等々、複雑なすべてを割り切ろうなんて、無理な話です。もっと個人、ひとりひとりに向き合う努力が大切です。

建設業界も、経営事項審査では女性活躍促進を評価する制度があります。評価点を上げるためにすることではありませんが、女性にとっても本当に働きやすい職場を作る試みは簡単ではありません。しかし、何か手を打たなければなりません。経営者としての悩みどころです。どのような取組みを実行するにせよ、それが当初に意図した通りに機能しているか、丁寧なフォローが重要であることを本書は指摘しています。仕組みを作って、それっきりはダメですよね、やはり。

牧野 百恵『ジェンダー格差』(中公新書 2023年)
2024年5月27日