外国人関係の仕事をしていて、いつも困るのが、技術者の在留資格申請です。新型コロナ禍以前から、人手不足は始まっていて、運良く、働き手になってくれそうな外国人が見つかったので、在留資格の相談をしたい、というご相談は多いです。
正確には、外国人の在留資格の「技術・人文・国際業務」という区分で、技術者や事務作業者の就業資格です。たとえば、建設業の場合、設計業務に従事する場合に必要です。要件は厳しくて、建築設計に関する大学を卒業していること、または設計業務に10年以上従事していることが必要です。しかも、受入れてからも設計業務限定です。建築現場で人が足りないので応援にまわってもらうという運用は、原則として出来ません。
日本人の就職では、学歴要件とか、業務経験は、それほど重視されず(むしろ“人柄重視”という、考えようによっては、よりハードルが高い基準?)、まして、採用後は設計業務専属なんて、考えられません。小規模の会社だと、設計業務だけでまとまった量の仕事を継続的に請けることは難しいので、人手不足で困っていても、簡単に外国人を雇うわけにはいきません。
就業系の在留資格制度は、仕事に人を割り当てる“ジョブ型雇用制度”で組立てられています。という話をすると、「何、オマエ、偉そうなこと言ってんの?」と言わんばかり、お客様の表情が険しくなるのが気まずいです。日本の多くの会社は“人に仕事を割り当てる”メンバーシップ型雇用制度です。両者は、お互いに交わらない位置関係にあって、外国人が日本で働くのは容易ではありません。これだけ現状を度外視した制度も珍しいのでは、と思います。
私も不思議だなーと思ってきたこと、とくに「技術・人文・国際業務」については、この本の後半に書かれていました。前半は、技能実習制度、特定技能制度、特定就労制度に至る諸々の矛盾の紆余曲折です。日本の特殊な雇用制度を逆手に取り、省庁間の権限闘争の中で在留資格制度が翻弄された過去30年の経緯が延々と記述されています。驚きと落胆の連続ですが、おそらく問題は外国人政策だけではなく、金融政策、財政政策にも同様のことが見られるのでしょう。失われた30年の末、ようやく「挑戦しない国に未来は無い」と気勢が上がっています。それは間違いではないのですが、挑戦を始める前に、現状を良く見て、正確に分析し、適切な目標設定をする必要があるでしょう。
濱口桂一郎『外国人労働政策』中央公論新社(2026年)
2026年2月28日

