大企業向けの内容なのでは・・・。
プライシングの章は中小企業の視点で読んでも有益です。
前半4章は、エネルギー構造、生成AI、循環経済、経済安全保障とグローバルサプライチェーンと、4つの論点を扱っています。これらは、既に昨年(2023年)も、かなり明確な問題で、とくに目新しさを感じるものではありません。
しかしながら4つの論点のいずれも、物価上昇と関係しています。大企業、中小企業を問わず共通の問題です。賃金上昇を伴う物価上昇は、まさにこれからです。日本経済は、これまで長くデフレ経済で、低価格を前提に生活や仕事が成り立ってきました。その前提が、昨年あたりから明確に崩れてきました。デフレからインフレへ、時代は変わる、などと言われます。問題は、人々のマインドが、それほど簡単に切り替わるか?
値上げすることを考えろ、と簡単に言います。その前に検討すべきことがあります。現在の価格が適切か?適切でないなら、どの程度、安過ぎるのか?それは何故か?建設業の場合、個々のプロジェクトの収益性を把握しているか、ということです。正確に計算するのは、なかなか手間がかかります。ましてや、仕事量が多かったり、社員が増えてくると、問題意識がなかなか共有できていないのでは?そんなことを考えるヒマがあるなら、仕事とって来いとか、さっさと仕事しろとか、身体が勝手に動いているとしたら、デフレ体質が染みついているかもしれません。
インフレ時代は、考えるべきことがデフレ時代とは違います。思ったより儲かった、期待したほど儲からなかった、そのような情報に潜むヒントを頼りに、適正な価格設定に向けて丁寧に打ち手を考える必要があります。お客様と直接向き合う営業、職人だけでなく、データをコツコツ集めてスマートに分析するスタッフの役割も重要です。いかにして価値を作り込むか、原価計算を意識した仕組みづくり、組織づくりが必要です。
ボストンコンサルティンググループ編 『BCGが読む経営の論点2024』(日本経済新聞出版 2023年)