建築って、難しいですよね。美術品のような説明をする人も居れば、歴史から説明する人、純粋に設計とか構造を説明する人、哲学から説明する人、いろいろです。わたし的には、美術から哲学にのめり込む説明が好きなのですが、仕事柄、それだけでは困るので、やはり設計とか、建築技術とか、そういう観点からの説明を、聞いて理解できる程度にはなりたい、と思っています。

建築の三原理、用、強、美を軸にした説明がわかりやすい。これらは設備設計、構造設計、意匠設計と対応していて、建築士法や建築設計・監理等業務委託契約に従って設計契約を読み込む際の見通しが良くなりました。

名建築に関する説明が多い。名建築の多くは、圧倒的な権力と財力を背景に造られて来ました。それ故、名建築の“クセ(個性)の強さ”も凄まじいのかもしれません。しかし、建築家、技術者、職人にとっては技術と経験を豊かにする機会です。近年の日本は、人口減少で、景気も良くないので、大盤振る舞いの建築の機会はそれほど多くないでしょう。オリンピックや博覧会は、その数少ないイベントですが、最近は、無責任なカネの使い方や、資材費・人件費高騰で、せっかくの機会を活用しようという機運も削がれている感があります。公共的な建物も、将来、他のどのような施設と統合されるかわからないので、クセ強な建物は、あまり設計できなくなるのでは、と危惧しています。

それとも、持続可能な社会との関係で考えると、これからの時代は、厳しい制約の中だからこそ、優れた建築が生まれて来る、と考えるべき?

坂牛 卓『教養としての建築入門』(岩波新書 2023年)