Eurasia Groupが年始に発表するTop 10 Risksが、今年も日本のマスコミで取り上げられた。取扱いは、10項目のタイトルをサラッと眺める程度で、淡泊だったけれど、昨年、リリースされたイアン・ブレマー氏の『危機の地政学』が参考になる。
リスクとされる、ほとんどの事象がグローバルな対応を必要としており、国際的連携が求められている。しかし、国連は機能不全に陥っており、国際社会の超大国であるアメリカと中国は、厳しい対立関係にある。それでも、私たちは主義や立場の違いを乗り越えて、協調するしかないほど、それほどに人類は今、存亡の危機にある。
地球温暖化については、年平均気温の上昇が1度とか2度とかのレベルなので、問題の深刻さを実感できない人も居るかもしれない。そのレベルであっても、極地の氷が解け、海面水位が上昇し、居住不可能な地域が発生する。その地域の住民は、祖国を離れて、他地域へ移動しなければならない。従って、今後、大量の環境難民が発生する。日本は、難民の受入れに消極的だったり、大量の外国人労働者を雇用していながら、支援サービスが未整備だったりする。それでも、ロシアのウクライナ侵攻に関しては、ウクライナからの避難民に対し過去に例を見ない積極的な受け入れ対応をした。ウクライナ以外の人々も、公平に受け入れて欲しいと、要望が出されたほどだ。今後、増大が見込まれる環境難民についても、日本は人道的立場から受入れざるを得ないだろう。幅広く様々な外国人を適切な処遇で受入れる社会を、日本もあらためて準備する必要がある。
デジタル化のリスクについては、個人情報の悪用、監視社会等が指摘されている。加えて、私はダイナミック・プライシングや、行動経済学のナッジが、アルゴリズムとしてブラック・ボックス化されて、いつの間にか消費者の利益をかすめ取ることに悪用される危険にも注意が必要だと思う。
年明け早々、アメリカの議会下院議長が、なかなか決まらないニュースには呆れたが、アメリカの根深い分断ぶりは、引き続き注意して見ておく必要がある。
イアン・ブレマー 『危機の地政学』 日本経済新聞出版 2022年