私も外国人の在留資格に関する仕事をしているけれど、特定の分野に偏って、視野が狭くなるといけないので、読んでみた。
外国人に関する基本的な法律の中心にあるのは、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)だ。この法律の名前を見ても、普通に出入国する外国人と難民とは別の取扱い、という感じが、すごくする。ところが、それは日本が難民の受入れに消極的だからであり、最近のグローバルな移民のトレンドは、出稼ぎ、就労よりも、難民なのである。さすがの日本も目を背けることが難しい事件が最近、起きた。ミャンマーの国軍クーデターや、ロシアによるウクライナ侵攻である。これらの事件のおかげで、日本も比較的多くの難民を受け入れることになった。この経験は、今後の日本の移民政策に少なからず影響を与えるだろう。
日本は、建て前としては移民を受け入れないことになっていて、入管法などの法制度も、外国人を特別扱いする仕組みになっている。日本人の、日本人による、日本人のための日本を守るためなのか知らないけれど、今や、多くの日本人にとっても、日本は暮らしにくく、働きにくい国になってしまった。エネルギーに乏しい日本、資源に乏しい日本、労働環境が劣悪な日本、総じて、過去数十年の間にすっかり弱体化した経済が円安という形で辛口評価された日本である。日本での生活が厳しい、働けないと訴える在留外国人の話をよく聴くと、それは日本人にも共通する悩みである。
新型コロナ禍がいつ終わるのかはわからないけれど、仮に終わったとして、以前の経済状況に復帰するとは考えにくい。東アジア地域における日本の将来は、残念ながら明るくない。海外から新しい外国人が次々に訪れて、日本経済を支えてくれる、そんな時代がこれからも続くだろうか?すでに来日して、一緒に働いてきた外国人たちと信頼し合い、穏やかに暮らす、そのような社会を目指して、さまざまな課題を整理、克服していかなければならない。
日本の外国人受入れ政策について、歴史的経緯、技能実習制度を中心とする就労資格の問題点、経済原理によらない移民増大のトレンド、政策の矛盾が生む外国人差別など、さまざまな問題を統一的な視点から論点整理した良書です。
宮島喬『「移民国家」としての日本-共生への展望』 岩波新書2022年