地球上の生態系ピラミッドの頂点に君臨する雑食性動物としての人間が、火も道具も使わず野生状態で生存可能な数は、たかだか1000万頭だそうだ。現在、地球上の人口は大雑把に80億人だから、知性や文化、科学技術の補助があるとは言え、大幅に過剰だ。その食糧をまかなうために膨大な数の動物が飼育され、そのために膨大な量の穀物が作付けされている。人間を中心にして地球上の生態系は乱れに乱れている。
そのような人間の活動が地球史に痕跡を残すほどになったということで、人新世(アントロポシーン)と名付けられた時代に、人と人とのつながりは、資源配分を通じて地球レベルで密度を増している。地球の資源は有限だから、増えすぎた人類は、食事や持ち物だけでなく、生活スタイル全般について、何をどれだけ消費し、どのように廃棄するか、考え直す必要がある。自分勝手を許せば、不測の損害を被るメンバーも居るので、十分な議論と同意形成が重要になる。
自分のものだから、どう使おうと勝手だろう、と言えた時代が過去になりつつある。“みんなのもの”、コモンズの存在が重要度を増している。「へー、これもコモンズなの」と、見立て次第でいろいろなものがコモンズになり得るのだ、と感心しながら読んだ。新しい時代に向けた“Whole Commons Catalogue”とは言い過ぎか。
「民主主義の核となる要素は、熟議、妥協、および多元主義です」と経済学者グレン・ワイル氏の記事にあった。Covid-19感染症2年目の世界は、アメリカの国議会議事堂襲撃事件で始まった。意見対立する相手を容赦しない空気が蔓延した。頑なな信念を貫く半面、聴く耳を持たぬ政治が横行した。今、民主主義に不足しているのは、妥協だ。妥協を受け容れる人々にも敬意を忘れない政治。そんな世界を新しい年に期待する。
WIRED 2021 VOL.42
NEW COMMONS コモンズと合意形成の未来