4回目の緊急事態宣言の延期が決まった。期待を裏切らないガッカリ感の中、新しい議論が芽吹きつつある。それは希望の芽か、あるいは不安の芽か。行動制限の緩和だ。ワクチン接種が日本より進んでいる国々で、再び感染拡大していることや、ブースター接種の動きに対して、全世界的に公平な接種機会確保の観点からWHOが懸念を示していることなども考慮して、慎重な議論が必要だろう。心配なのは、根拠なき行動緩和だ。
感染症対策というと、私がいつも想起するのは、昨年読んだ『新型コロナ対応民間臨時調査会調査・検証報告書』の250ページの図だ。
この図は、“新型インフルエンザ等対策政府行動計画”からの抜粋だ。
感染症対策の基本的な考え方を示した図である。対策が無い場合とある場合とで、違いを強調する目的で描いている。これはこれで良いのだけれど、何か違和感を感じる。この図だと、ピークの山が高くても、早く収束するなら、そのほうが良い!となりかねない。中途半端な対策で、ダラダラ長く行動制限されるより、よほど良い、とか言われそう。
今にして思うと、Covid-19感染症については、曲線の正しい形は、おそらく次のようになるだろう。
ピークの山が小さいと、早く収束する(パターンA)。ピークの山が高いと、なかなか収束しない(パターンB)。さらに言えば、パターンAの場合は、最終的にゼロの可能性も無くはないけれど、パターンBの場合、ゼロはあり得なくて、一定の水準以下には、なかなか下がらない、という違いもある。この、“一定の水準以下には下がらない状態”がいわゆる“ウィズ・コロナ”となるのであろう。
今は、パターンBになりかけている(または、なっている)状況だ。患者数が医療提供のキャパシティを超えている部分は医療崩壊を起こしている。この状況は絶対に回避しなければならない。今後は、医療提供のキャパシティを超えないようにパターンAのような小さな波の連続状況を維持しながら、命と経済の両立を図る必要があるだろう。そのもとでの“行動制限緩和”であって、制約条件がまったく何もない、という状況は考えられないだろう。
ところで、最近はニュースでいろいろな演説を聴く機会が増えた。“以前の暮らしを取り戻す”などと威勢の良い話も飛び出す。しかし、誰もが聞きたいのは、その根拠、理路整然とした説明だ。それはいつなのか?いかにして達成されるのか?
新型コロナ対応民間臨時調査会調査・検証報告書(Discover)