日本でもCOVID-19感染症拡大が第4波を迎え、東京もまん延防止措置が始まった。今年に入って発出された緊急事態宣言も、自粛疲れでやむなく解除を迎える頃には人の流れが増えてしまい、人事異動や卒業、入学、入社というイベント時期とも重なって、新規感染者数が各地で急増してしまった。

COVID-19感染症2年目の今年は、変種株の発生とか、ワクチン接種とか、新しい変化もあるけれど、ウイルスそのものの得体の知れなさは、それほど変わっていないようだ。しかしながら1年以上経過して、さまざまな情報に触れた結果、忘れてしまった大切なこともあるかもしれない。ということで基本を確認。

(1)ソーシャル・ディスタンス(2m)を確保すること
(2)ソーシャル・ディスタンスを保てない場所ではマスクを着用すること
(3)手指消毒を励行すること

さて、この本では、COVID-19感染症対策について、状況に応じて柔軟に考える余地、自由度があることを説明している。“絶対に”マスクをしろ、などと脅迫的なことは言ってない。安全を確保するための適切な方法は、状況に応じて多少、異なるので、各人がよく考えて、適切な方法を採ること、工夫をすることの大切さを説いている。

日本は、まだクラスターを追跡できるので、クラスター多発地域とその周辺に集中した対策で済んでいる。第3波後の対策は、地域限定の“まん延防止措置”で始まった。この本がリリースされたのは2020年10月頃だが、現在の対策は、おおむねこの本の内容通りだ。新種株は、感染力が強いので、クラスターをトレースするスピードが追い付くかどうか心配だ。重症患者病床数の過不足も重要だが、保健所の稼働状況も要注意だろう。

クラスター追跡できる範囲に新規感染者数の増大を抑制できれば、緊急事態宣言に及ぶ必要は無いかもしれない。地域限定の“まん延防止等重点措置”では、たとえば線路の南側と北側とで、飲食店の営業時間が違う、ということが問題視されるかもしれないが、この本の最後で触れているように、みんなが同じ対策をする、みんなが同じ行動をする、ということが、とくにこのCOVID-19感染症の場合、正しい対策にならない場合もある、ということは認識しておくべきだろう。ひとりひとりが、それぞれで適切な対策を取る。分断のように見えるけれど、社会を救うための、そういう協力関係もあるのだ。

コロナ、てんでんこ。

岩田健太郎/丁寧に考える新型コロナ(光文社新書)

「ただ、いつも言うことですが、日本はみんなでばらばらにやるっていうことをすごく苦手とする国なのです。どちらかというと「みんなで一緒にやる」とか、「どうすればいいのかを教えて欲しい」って言う傾向がある。
みーんながばらばらにやれって言われても困ってしまう。でも実は、みーんなばらばらにやるというのがいちばん、このコロナ対策としては適切なんですよ。」