「技能実習制度」で日本に滞在する(した)外国人の実態に関するレポート。技能実習制度については、制度そのものや、日本の労働法制の運用実態など、構造的で根深い問題もある。しかし、昨年から続くCOVID-19感染症蔓延の状況下、解決を優先すべき喫緊の問題は、それではない。技能実習生に限らず、働くにも仕事が無く、本国に帰ろうにも帰れず、日本で生活せざるを得ない外国人は、いったいどうしたら良いのか。基本的な生存にかかわる問題だ。

この1年を振り返ると、残念ながら政府の感染症対策は空振りや後手にまわったものが多く、本当に困っている日本人に対してさえ十分に手が届いているとは言い難い。ましてや在留外国人に対する対策は、後回しか、度外視に近い状況だ。日本語が十分に理解できない外国人にとっては、公助がほとんど期待できない中、“まず自分で頑張ってみよ”と放り出されているに近い。

昨年、北関東で起きた家畜窃盗事件は、今も詳細が判然としない。私の想像だけれど、十分な共助、公助が行き届かない社会で、追い詰められた人々は、それでも活路を開くため、究極の選択を強いられる。そして、望ましくない結果が実現したのが、あの事件だったのだろう。そのように考えると、単に外国人犯罪という他所事ではなく、日本に住む誰にでも起こり得る(実際に起きている)極めて不幸な事件のひとつとして、捉え直す必要があるだろう。

COVID-19で本当に困っている人が救われる、COVID-19と真剣に戦う人が救われる。むしろ社会のほうが、その程度には「高度」であって欲しい。

📖安田 峰俊/「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本(角川書店)

東アジアの国際的な労働力の流れの変化について、参考になる記述が、ポツポツと挟み込まれている。ライブ・コマースという観点で中国市場を視野に置いている中小企業にとっては、少し違う読み方が出来ると思う。(2021年4月7日)