<事例>
A株式会社は、建設資材のつり上げ作業を行った。その際、つり上げ荷重1トン以上の移動式クレーンによる玉掛け作業を担当したのは、クレーンのリース会社から派遣されたオペレータであった。後日、当該オペレータが、法定資格を有しないことが発覚した。
<処分>
建設業の全部について3日間の営業停止処分
<注意点>
事前に工事現場の作業と担当要員について、次を確認しておくことが必要です。
- 就業制限がある作業か?
- その作業者は、有効な資格を有しているか?
事前に確認した通りに、作業員が配置についているか、割り当て以外の余計な作業をしていないか、の随時確認も必要です。
人材不足で、適法な資格を有する要員の確保が困難になっています。どこの会社も、みんな苦労しています。それだけに、工事の一部でも社外の要員に委託する場合は、要員の保有資格確認が重要です。
<法的根拠>
クレーン作業については労働安全衛生法第六十一条に規定されています。
(就業制限) 第六十一条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。 2 前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない。 3 第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。 4 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項(同法第二十七条の二第二項において準用する場合を含む。)の認定に係る職業訓練を受ける労働者について必要がある場合においては、その必要の限度で、前三項の規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。 |
具体的には労働安全衛生法施行令第二十条に規定されています。
(就業制限に係る業務) 第二十条 法第六十一条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする。 一 発破の場合におけるせん孔、装てん、結線、点火並びに不発の装薬又は残薬の点検及び処理の業務 二 制限荷重が五トン以上の揚貨装置の運転の業務 三 ボイラー(小型ボイラーを除く。)の取扱いの業務 四 前号のボイラー又は第一種圧力容器(小型圧力容器を除く。)の溶接(自動溶接機による溶接、管(ボイラーにあつては、主蒸気管及び給水管を除く。)の周継手の溶接及び圧縮応力以外の応力を生じない部分の溶接を除く。)の業務 五 ボイラー(小型ボイラー及び次に掲げるボイラーを除く。)又は第六条第十七号の第一種圧力容器の整備の業務 イ 胴の内径が七百五十ミリメートル以下で、かつ、その長さが千三百ミリメートル以下の蒸気ボイラー ロ 伝熱面積が三平方メートル以下の蒸気ボイラー ハ 伝熱面積が十四平方メートル以下の温水ボイラー ニ 伝熱面積が三十平方メートル以下の貫流ボイラー(気水分離器を有するものにあつては、当該気水分離器の内径が四百ミリメートル以下で、かつ、その内容積が〇・四立方メートル以下のものに限る。) 六 つり上げ荷重が五トン以上のクレーン(跨こ線テルハを除く。)の運転の業務 七 つり上げ荷重が一トン以上の移動式クレーンの運転(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第一号に規定する道路(以下この条において「道路」という。)上を走行させる運転を除く。)の業務 八 つり上げ荷重が五トン以上のデリツクの運転の業務 九 潜水器を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて、水中において行う業務 十 可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務 十一 最大荷重(フオークリフトの構造及び材料に応じて基準荷重中心に負荷させることができる最大の荷重をいう。)が一トン以上のフオークリフトの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十二 機体重量が三トン以上の別表第七第一号、第二号、第三号又は第六号に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるものの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十三 最大荷重(ショベルローダー又はフォークローダーの構造及び材料に応じて負荷させることができる最大の荷重をいう。)が一トン以上のショベルローダー又はフォークローダーの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十四 最大積載量が一トン以上の不整地運搬車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十五 作業床の高さが十メートル以上の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務 十六 制限荷重が一トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務 |
労働安全衛生法の罰則を確認すると、
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 一 第十四条、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項若しくは第二項、第三十四条、第三十五条、第三十八条第一項、第四十条第一項、第四十二条、第四十三条、第四十四条第六項、第四十四条の二第七項、第五十六条第三項若しくは第四項、第五十七条の四第五項、第五十七条の五第五項、第五十九条第三項、第六十一条第一項、第六十五条第一項、第六十五条の四、第六十八条、第八十九条第五項(第八十九条の二第二項において準用する場合を含む。)、第九十七条第二項、第百五条又は第百八条の二第四項の規定に違反した者 二 第四十三条の二、第五十六条第五項、第八十八条第六項、第九十八条第一項又は第九十九条第一項の規定による命令に違反した者 三 第五十七条第一項の規定による表示をせず、若しくは虚偽の表示をし、又は同条第二項の規定による文書を交付せず、若しくは虚偽の文書を交付した者 四 第六十一条第四項の規定に基づく厚生労働省令に違反した者第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。 一 第十条第一項、第十一条第一項、第十二条第一項、第十三条第一項、第十五条第一項、第三項若しくは第四項、第十五条の二第一項、第十六条第一項、第十七条第一項、第十八条第一項、第二十五条の二第二項(第三十条の三第五項において準用する場合を含む。)、第二十六条、第三十条第一項若しくは第四項、第三十条の二第一項若しくは第四項、第三十二条第一項から第六項まで、第三十三条第三項、第四十条第二項、第四十四条第五項、第四十四条の二第六項、第四十五条第一項若しくは第二項、第五十七条の四第一項、第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第六十一条第二項、第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項、第八十七条第六項、第八十八条第一項から第四項まで、第百一条第一項又は第百三条第一項の規定に違反した者 二 第十一条第二項(第十二条第二項及び第十五条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十七条の五第一項、第六十五条第五項、第六十六条第四項、第九十八条第二項又は第九十九条第二項の規定による命令又は指示に違反した者 三 第四十四条第四項又は第四十四条の二第五項の規定による表示をせず、又は虚偽の表示をした者 四 第九十一条第一項若しくは第二項、第九十四条第一項又は第九十六条第一項、第二項若しくは第四項の規定による立入り、検査、作業環境測定、収去若しくは検診を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者 五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者 六 第百三条第三項の規定による帳簿の備付け若しくは保存をせず、又は同項の帳簿に虚偽の記載をした者 |
労働安全衛生法での罰金刑により、建設業法の罰則を確認すると第28条第1項第3号及び同条第3項が該当します。
(指示及び営業の停止) 第二十八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定(第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五並びに第二十四条の六第三項及び第四項を除き、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号。以下「入札契約適正化法」という。)第十五条第一項の規定により読み替えて適用される第二十四条の八第一項、第二項及び第四項を含む。第四項において同じ。)、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第四十一条第二項又は第三項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。 一 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。 二 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。 三 建設業者(建設業者が法人であるときは、当該法人又はその役員等)又は政令で定める使用人がその業務に関し他の法令(入札契約適正化法及び履行確保法並びにこれらに基づく命令を除く。)に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき。 四 建設業者が第二十二条第一項若しくは第二項又は第二十六条の三第八項の規定に違反したとき。 五 第二十六条第一項又は第二項に規定する主任技術者又は監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき。 六 建設業者が、第三条第一項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき。 七 建設業者が、特定建設業者以外の建設業を営む者と下請代金の額が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上となる下請契約を締結したとき。 八 建設業者が、情を知つて、第三項の規定により営業の停止を命ぜられている者又は第二十九条の四第一項の規定により営業を禁止されている者と当該停止され、又は禁止されている営業の範囲に係る下請契約を締結したとき。 九 履行確保法第三条第一項、第五条又は第七条第一項の規定に違反したとき。 2 都道府県知事は、その管轄する区域内で建設工事を施工している第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該建設業を営む者に対して、必要な指示をすることができる。 一 建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。 二 請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたとき。 3 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第一項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項若しくは次項の規定による指示に従わないとき又は建設業を営む者が前項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。 4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは履行確保法第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。 5 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第一項各号のいずれかに該当するとき又は同項若しくは前項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、当該営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。 6 都道府県知事は、前二項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その旨を、当該建設業者が国土交通大臣の許可を受けたものであるときは国土交通大臣に報告し、当該建設業者が他の都道府県知事の許可を受けたものであるときは当該他の都道府県知事に通知しなければならない。 7 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項第一号若しくは第三号に該当する建設業者又は第二項第一号に該当する第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者に対して指示をする場合において、特に必要があると認めるときは、注文者に対しても、適当な措置をとるべきことを勧告することができる。 |