契約書の重要性
契約書や規定の見直しのお問い合わせが増えています。新型コロナウイルス感染症や、ウクライナ情勢、米中経済対立などで、世界のサプライチェーンが混乱し、資材調達の見通しが以前よりも不透明になりました。短期間で資材価格が高騰したり、予定の納期に資材を確保することができなかったりで、工事の予算管理、スケジュール管理に影響しています。その影響を、工事を請負った側が一方的に吸収できる状況ではなく、工事の発注側と受注側と、双方での協力が必要な状況です。工事契約をめぐり、お客様と工事業者、元請業者と下請け業者で、取引関係をあらためて見直す機会が増えています。取引価格や納期遅延の問題を検討するうち、あらためて契約書を見直してみたら、いろいろと不具合が見つかった、というケースも少なくないでしょう。
混乱続きの状況が、容易に収束せず、当面は継続するのであれば、それに合わせて、取引の内容も柔軟に見直すことが必要です。取引の内容を決定する基本文書として、契約書の重要性が高まっています。
契約書をめぐる問題
契約書は、取引の条件や当事者間の関係について規定します。ビジネスは多種多様ですから、それに応じて、取引の条件や当事者間の関係も様々です。本来は、ひとつひとつの取引に合わせて契約書をゼロから作る必要があります。実際には面倒なので、そのようなことはしません。一般によく使われている契約書や、販売されている出来合いの契約書をそのまま使ったり、以前から使っている契約書を流用したり、ということが行われています。取引先が用意してきた契約書を、あまり確認せずに使っている場合もあります。問題が起きなければ、それで良いのかもしれません。この慣習は、長期にわたって、価格が比較的安定的だった過去には有効です。価格が上昇しやすかったり、リスク分散のために取引相手を積極的に増やしたり、そのような事業環境では、取引条件や取引相手との関係を的確に反映した契約書が必要です。そうでない契約書には、次のような問題があります。
(1)必要な条文が不足していて事業のリスク回避に役立たない
(2)余計な条文が残っていて予期しない法律上のリスクを抱えてしまう
契約書というと、個別の条文や法律用語に注意が向きがちです。確かにそれも大切ですが、まずは事業の内容、取引の内容、取引相手との関係を整理して、取引上、想定されるリスクに適切に対応することの検討が最重要です。
内部規定の重要性
契約書は、取引当事者どうしの関係について明らかにするものです。契約書の検討と言うと、取引相手の行動をどのように制限するか、に意識が向きがちです。その点は、取引相手も同じことを考えています。契約書を検討する際は、自社の行動、組織の場合は、内部規定や、その運用実態を検討しておく必要があります。契約書を作成したり、変更したりする場合には、自社の内部規定の整備状況も確認しておきましょう。
スタートアップ企業の場合
これから事業を始める場合、新しい取引先との関係を構築するツールのひとつが契約書です。また、自社の運営のしくみを構築するツールのひとつが社内規定です。取引先との関係も、自社の運営のしくみも、目には見えないものですが、それを可視化するものとして、契約書や社内規定などの文書を揃えることが大切です。
<最終更新日:2023年3月6日>