重要性が高まる建設業許可
建設業は、許可が無くても営業可能です。軽微な工事、つまり請負代金が500万円未満(建築一式工事では1500万円未満)なら、許可は不要です。
ところで、請負代金の内容は、工事原価+適正利益です。工事原価の大部分は労務費、材料費です。外注費も内容を分析すれば、ほぼ同様でしょう。資材費は、新型コロナやロシアのウクライナ侵攻の影響で上昇しています。労務費は、賃金引上げの動きがあり、これも上昇傾向です。適正利益も安易に削減できません。請負代金は全体として上昇傾向なのでは?
つまり、無許可の状態で受注できる工事は、最近のインフレの影響で、その規模が小さくなっています。うっかりしていると、500万円未満の制約を簡単に超えます。いつの間にか建設業法違反です。
建設業法は、近年、各種金額基準の見直しを行っていますが、軽微な工事の金額基準は見直していません。そのため、インフレ下では、建設業許可を取得していない事業者に対して、建設業法の運用は厳しくなっていると言えるでしょう。
許可は継続した見直しが大切
建設業許可は、5年ごとに更新が必要です。
その他に、所定の項目について変更があれば、変更の届出が必要です(建設業法第11条)。
また、事業年度ごとに決算変更届(決算報告書)の提出が必要です。
建設業許可は、取得して終わりではなく、許可を維持すること(メンテナンス)が必要です。
見過ごされている変更届
ところが、現実には、5年ごとの更新だけが意識されていて、変更届や決算変更届が未提出のまま放置されていることが少なくありません。
5年と言えば、その間に役員が新たに就任したり、辞任、退任したりします。主たる営業所が移転していることもあります。専門とする工事領域が変化している場合もあるでしょう。そのような変更を放置していると、5年目に来る更新の手続きを始めても、保留されている変更届の提出で手間取ります。変更届の提出が完了するまで、更新手続きは保留されます。
経営事項審査(経審)を受審している事業者も同様です。前回の経審の時から今回の申請までに発生した変更をすべて届出ていることを確認して、はじめて経営事項審査を受け付けてもらえます。
保留している変更届が多いと、それを実証するための証明書類を揃えるのに余計に手間、時間がかかります。審査部門から指導を受ける場合もあります。
変更届や決算変更届は、法定の提出期限を守ってすみやかに提出しましょう。
決算報告書:事業年度終了後4か月以内
常勤役員等・保険の加入状況・専任技術者・令3条の使用人(支配人除く)の変更:変更後2週間以内
その他の変更事項及び一部廃業:変更後30日以内
最近の変更
「建設業法施行令の一部を改正する政令」が、閣議決定されました。
次を見直しています。
・監理技術者等の専任を要する請負代金額等
・技術検定制度
営業所専任技術者の要件が緩和されました。技術検定の受験資格が見直されました。
電子申請システム
建設業許可の電子申請システムの運用が始まりました(令和5年1月10日)(詳細)。
東京都知事許可も電子申請に対応しています(東京都知事許可の電子申請について)
従来通り、紙媒体での申請も可能です。
システム申請の利用には、gBizIDの取得が必要です。
参考条文
(変更等の届出)
第十一条 許可に係る建設業者は、第五条第一号から第五号までに掲げる事項について変更があつたときは、国土交通省令の定めるところにより、三十日以内に、その旨の変更届出書を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
2 許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
3 許可に係る建設業者は、第六条第一項第三号に掲げる書面その他国土交通省令で定める書類の記載事項に変更を生じたときは、毎事業年度経過後四月以内に、その旨を書面で国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
4 許可に係る建設業者は、営業所に置く第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者として証明された者が当該営業所に置かれなくなつた場合又は同号ハに該当しなくなつた場合において、これに代わるべき者があるときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その者について、第六条第一項第五号に掲げる書面を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
5 許可に係る建設業者は、第七条第一号若しくは第二号に掲げる基準を満たさなくなつたとき、又は第八条第一号及び第七号から第十四号までのいずれかに該当するに至つたときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その旨を書面で国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
(毎事業年度経過後に届出を必要とする書類)
第十条 法第十一条第二項の国土交通省令で定める書類は、次に掲げるものとする。
一 株式会社以外の法人である場合においては別記様式第十五号から第十七号の二までによる貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び注記表、小会社である場合においてはこれらの書類及び事業報告書、株式会社(小会社を除く。)である場合においては別記様式第十五号から第十七号の三までによる貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表及び附属明細表並びに事業報告書
二 個人である場合においては、別記様式第十八号及び第十九号による貸借対照表及び損益計算書
三 国土交通大臣の許可を受けている者については、法人にあつては法人税、個人にあつては所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書面
四 都道府県知事の許可を受けている者については、事業税の納付すべき額及び納付済額を証する書面
2 法第十一条第三項の国土交通省令で定める書類は、第四条第一項第一号及び第六号に掲げる書面とする。
参考資料
建設業法の概要(パンフレット)
東京都都市整備局 建設業許可
最終更新:2024年1月20日